2013.01.16 Wednesday
スタイルが文芸という点で前から一穂ミチ先生の作品が気になっていたが、
『is in you』は、言わば僕自身が、香港への里帰りの後で衝動買いした一冊でした (笑)
正直文学だけでなく、歌や映画の中で描かれた香港が、多少ステレオタイプ付きな部分があるのと同時に、香港人としてそういった決め付けに過剰反応する所もあるので、いつもなら、香港が舞台だと聞いた時点ではむしろ読みたくない方だった。
でも、『is in you』の中に描かれた香港は、割りと好きかもしれません。
もちろん香港に行った事がない、舞台だろうが建物や観光スポットなどどうでもいいという感想も見かけるが、それらを適切なコンテンツに詰め込み、相応しい観点から、紹介する程度で全部描き出すのがなかなか難しいと思う。はっきり言えば、一束から見た香港って、外人からでも香港生まれ香港育ちの香港人からでもないような特別な存在であり、その場所に対する妙な執着を持ちながらも、香港崇拝ではないというか、どこか熱が冷めたような感じで自分の周りを見つめる事が出来る、と言ったようなキャラ作りは、とても適切だったと思う。
もちろんそれは一束の性格の内でもあるんだが。なんつかこいつは香港人だって言われても違和感のない性格だったつか、その熱が冷めたようなかやの外的な感じ。むしろそこがステレオタイプだけど ww
一番印象深かったシーンは、やっぱり一束がいきなり広東語で怒り出した所でしょう。
自分は元々一束の言語コンプレックスが気になって『is in you』を読みたかったが、感情移入とか別にして、シーンの組み方自体がとても好き。
ちなみに、本の中の広東語の、話し方が古過ぎてむしろ笑ってしまう場合が多かったが wwwww
後はやはり皆のアイドル・佐伯さんと一束の関係性や、三人の三角関係でしょう。
口の悪さというより、気になって仕方ないというのに気にしてなさそうで嫉妬なんかあっさりと言い出す、そういうとこがカッコいいんだよな。
またその関係も、愛人関係なんかというよりも、ちゃんと愛はお互いあるのに、深入りをせずただ与えて求めるような付き合い、というか、いかにも佐伯と一束らしいと思った。決して弓削が(キャラクターとして)好まない訳でもないけど、佐伯と一束の掛け合いがメインCPのよりも読み応えがある!
その三角関係と言えばまた、恋愛上お互いをどうこうしようという関係性だけでなく、三人が人生の中の苦境を、どうやって解消するか、どういった態度をとって生きて行くかをも見たら、とても面白いコントラストが見られると思う。
一言で纏めるのなら、すんなりと読みやすい一冊でした。
『is in you』って恐らく、「(何年経っても) 相手が好きな気持ちは自分の中にある」「あなたは俺のものだ(〜属する)」など多重もじり、と思います。「(既定な言語で)言葉で伝わらなくてもその気持ちはきっとあなたの中にあって消えやしない」という意もあると勝手に思いながら。またロマンあるんだよなぁこーゆーの。
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