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2024.05.17 Friday
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2012.09.26 Wednesday


木原先生の作品の中でも一番描写がきつくてグロいという作品『WELL』。
『WELL』と『HOPE』という亮介視点と田村視点の二本で構成されているが、
実際『WELL』を読み終わった後あまりの暗さに気持ちが重くなり、少し間を空けてから『HOPE』を読んだ。これほどの絶望と破壊力でした。

ジャンルを決めつける事で評価の仕方も変わるので、改めて言わせて頂きますが、これはBLではなく、文学として見て評価すべきです。

苦境に追い詰められる人間が助け合ったり共食いしたり。
これをBLという鍵は亮介としのぶの関係になるが、果たして亮介を守るしのぶの気持ちに愛はあったのか。
生まれ育ちと、血縁などに囚われ、自分たちはこう生きていかないと行けない、みたいな、依存みたいなモノを感じた。生き残るためにこう思わないと精神的に壊れそうで仕方がない。
『HOPE』には、田村の心理描写でよく現れる「神様」という善悪の基準とも言える絶対的な存在は、しのぶにとってそれは亮介かもしれない。
それより、しのぶが話している様子を、脳内で浮ばせる事ができない...
しのぶが頭が悪いととても思えない...まぁ頭が悪いから倫理観が崩れても気付かないっていうのもアリだけど、亮介に血縁関係を告白したのも、田村と罪に関して語るのも、タイミングが良過ぎるというか、自分の存在について考えに考えて自我を無くしそうな時にこんな事言われたら、と思ったら、

無邪気という描写が繰り返されたが、そんな子が幾度も自分の行為を容易く正当化でき、他人が堅守してきた価値観を簡単に握り潰した所が、この作品の中で一番不気味な所だった。ある意味でデパ地下の住民よりもしのぶという存在が不気味だった。

亮介は『WELL』の時点ではしのぶに対する感情を「過去の繋がり」以外「利害関係」でだいぶ括られると思うが、もちろん「共犯」でいる繋がりが、時間を経てば変わるモノだろうけど『HOPE』の中で亮介が語ったしのぶの事がとても興味深かった。
死んじゃえば、もうこれ以上怖いものにも、ワケわかんないものにもなったりしないでしょう」(反転)
もうこれ以上壊れないでほしい、という捉え方をしてしまう僕。

『WELL』の表題は「井戸」という意味を捩って命題されて、書いて行くうちに迷走されたらしいけど (笑) 「順調、運良く」という意味で考えると、『HOPE』と同じ位皮肉で素晴らしい表題だと思う。
伊吹の騒動が終り一見一件落着だったが、実は救いが来る可能性が極めて低い。「運良くノアの箱船に乗れたと思ったら、もっと過酷で辛い結末が待っている」もその感じに当てはまるけどね。
その時にしのぶの「どうでもいい」という台詞がとても印象的だった。二人ともこの絶望的な状況に動揺もしなければ抗う事を最初から諦めている感じが、『WELL』の真意みたいなモノに思えて、なぜかぐっと来る。

『HOPE』の田村は、大勢の利益を考えて善悪に従って(囚われて)「正しい事をする」男で、カッコいいと思った。(ただサバイバルの環境では一番不利な性格&立場であるという)
でもデパ地下の陰謀って気付けよ普通に!これほどとはさすがに疑心なさ過ぎ。
他の読者さんはどうだったかわからないが、僕は片倉と大津の姿しか見た事ない時点で「他の人は食われたんじゃないの?」って思ったし、例の干しみかん?も疑わしいと思ったし、赤塚が運ばれた時点で「食うために運んだんだろう」って思ったし...なんつかフラグ立たせ過ぎ www
後半は色んな正義に囚われ、言わばどっちも選べないという状況の中で自分を貫く事ができなく、本当の意味でただ自分の死を待つ様になったが、まぁこういう性格の人はそうなるんだなぁと思った。
なんつか、田村のテーマって価値観と生死観だけど、僕は仲間思いな所が一番面白かった。人物像を描くのに必要だとは思うがやたらに神様神様って言うから途中うざくなって来た (おい

再読は、するんだろうが最初から最後までの再読はご免だな。
でもサバイバル系の作品が好きな人にはおすすめ。
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